イギリス国立鉄道博物館
2017年9月 ロンドンより300キロ。ヨークにあるイギリス国立鉄道博物館「National Railway Museum」へ。
1985年に開業したこの博物館は、100両を超える機関車と、200両の客車・貨車他、数十万の鉄道アイテムが収蔵され、世界最大級の規模を誇る。
大宮の「鉄道博物館」と、京都の「京都鉄道博物館」とは、姉妹提携をしている。
鉄道発祥の国であるイギリスにある博物館であることから、以前より注目していたが、京都の鉄道博物館よりも先に来ることになろうとは思っていなかった。
Station Hall
ステーションホールは、1870年代にヨーク駅に隣接して作られた貨物駅をそのまま利用している歴史的建造物だ。1800年台後半から1世紀に渡る様々な鉄道車両で満たされている。
再現されたホームには、様々な年代の客車が、一堂に会する。ベンチや、荷物を運ぶカート等、昔のものが再現されている。
West Coast Joint Stock postal sorting van No 186, 1885
見学可能な車両のひとつに郵便車があった。受取ポイントに設置された郵便袋を走行中に網でキャッチするという仕組みを取っていたようだ。列車を止めずに受け取る仕組みは今見てもとても斬新である。
London Brighton & South Coast Railway locomotive Gladstone
ライオンの装飾が施されたロイヤル・トレイン(王室専用列車)。1882年に作られた、ロンドンブライトン&サウスコースト鉄道の蒸気機関車「グラッドストーン」のお召し列車仕様である。
Great Hall
グレートホールは、ヨークに9個あった機関庫のうちの1つ、1877年に建てられた4番機関庫を使用している。
1942年4月、ドイツの空襲でひどく損傷したが、後に修復され、1967年まで蒸気機関車のメンテナンスを行うために使用された。
国立鉄道博物館をオープンするにあたり、ここはコレクションを収容するのに理想的なスペースだった。
世界最初の旅客鉄道
ロケット号のクランクシャフト
L&MR 0-2-2 ‘Rocket’ (Replica) – 1982.
ロケット号は、ロバート・スティーブンソンが設計した蒸気機関車である。(写真は1971年に作られたレプリカ)。
世界最初の旅客鉄道、リバプール・アンド・マンチェスター鉄道の機関車。最高速度は時速46.6キロ。
NER 0-6-0 ‘1001’ class steam locomotive and tender, No 1275, 1874
NER(ノース・イースタン鉄道)で、1874年~1923年まで使用された、ボイラーが長く「Long Boiler locomotive」と呼ばれていた。192両が作られた。
1001型のシリンダー
1001型の運転台
Furness Railway steam locomotive ‘Coppernob’ 0-4-0, No 3, 1846
ファーネス鉄道の、No.3 “Old Coppernob”(古い銅ノブ)と呼ばれる機関車。火室を銅でドーム型に覆ったことから、この相性がついた。1900年に引退するまで55年間近くも現役だった。
Great Northern Railway locomotive Stirling Single
1870年、GNR(グレート・ノーザン鉄道)の急行列車牽引のために、パトリック・スターリングによって設計された。大きな単一の駆動輪が特徴的。53両が作られ、1895年まで使用された。
転車台に向かって展示される各種車両
流線型時代 LNER – 世界最速蒸気機関車
LNER steam locomotive ‘Mallard’ 4-6-2 A4 Pacific class, No 4468, 1938
LNER(ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道)が作った、35両あるのクラスA4蒸気機関車の1つ「マラード」。クラスA4蒸気機関車は、ナイジェル・グリズリー卿によって設計され、風洞実験を利用し空気力学的に優れた抽選系の車体を持つ。1938年に時速203キロを記録した世界最速の蒸気機関車である。1963年まで使用された。
クロスヘッド周りの構造。ピストンロッドからメインロッドへのつ繋がりが分かる
クランクシャフトとエキセントリックロッド
マラードの運転台
世界最速を記したレリーフ
流線型時代 LMS – コロネーション・スコット
LMS(R) steam locomotive with tender ‘Duchess of Hamilton’ 4-6-2 Coronation class, No 6229, 1938
1938年に作られた、LMS(ロンドン・ミッドランド・アンド・スコットランド鉄道)の流線型蒸気機関車「ダッチェス・オブ・ハミルトン」。
特急コロネーション・スコット号を引くために作られた、コロネーションクラスの10番目の機関車。
新造された8両の客車と共に海を渡り1939年のニューヨーク博覧会に展示。流線型時代真っ只中に作られた列車は、センセーションを呼び注目された。
第二次世界大戦の勃発により、祖国に戻っても活躍の場はなく、メンテナンス効率の問題で流線型ケーシングは外された。
2009年5月に再び元の流線型に戻された。
クランクシャフトとメインロッド
イギリス国鉄最後の蒸気機関車
BR Standard Class 9F 92220 Evening Star
1960年に完成した、ブリティッシュ・レイルウェイズ標準規格の999番目にして同鉄道最後の蒸気機関車。製造時から保存されることが決まっていた。無煙化の波が押し寄せ、完成からわずか5年後の1965年に引退した。
緑と黒で塗り分けられたボイラーと、5軸の動輪が特徴的である。(日本では、3軸か4軸が主流)
クランクシャフトとメインロッド
砂巻きパイプ
クランクシャフト
ネジ式連結器
運転台
海を越えた新幹線
日本国有鉄道 新幹線 0系電車 22-141 先頭車両
2001年にJR西日本によって当博物館に寄贈されたもの。まさかイギリスのヨークに来て、日本の新幹線に会えるとは思っていなかった。
新幹線0系電車は1964年に世界で初めて200キロを超える営業運転を行った。鉄道史として歴史的な車両だ。
新幹線内部
2席2列で1窓の大窓車は、1964年から1975年まで143両製造されたが、石跳ねによるガラスの損傷を警戒し、座席1列に1窓の狭窓車に徐々に変えられていった。この新幹線0系電車は、最後まで残っていた初期型の大窓車である。