初めての登山 | 乙参嗜好-オッサンシコウ乙参嗜好-オッサンシコウ

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初めての登山

初めての登山。
これは、成り行きで突然起きた。

時はさかのぼり、西暦2011年。
東日本大震災もままならない、民主党時代の激動の日本。
私が勤める某IT会社も、当時の社長がゴリ押しで進めたプロジェクトが破綻し、社員全員のやる気が無くなっていたあの頃。

インドア派の私もアグレッシブな同僚のTも、疲れきっていた。

ある金曜日の夜、土曜日の明け方まで仕事をし、酒でも飲もうと同じく残っていたTの家に遊びに行く。
そのとき「山に行って写真を撮ったり、絵を描いたりしていやされに行こうよ」と、私がノリで言った事がきっかけで、翌週に上高地に行くことになる。
この時私が言った「山」とは、山梨等の都心から安易に車で行ける範囲の場所を想定していたのだが、まさか長野まで行く事になろうとは、ましてや登山をすることになろうとは夢にも思っていなかった。

場所が上高地に決定し、多少歩くと聞いて運動不足で体が重い私は、はっきり言って乗り気ではなかった。
とは言え、リフレッシュはしたい。
登山をするわけでは無いし、モノは経験、断る理由は無い。

出発に向けて、準備を進める。
広角レンズと、マクロレンズをレンタルし、スケッチブックを購入。(この時点ではまだ絵を描く気でいた。)
週末に富山に向かう友人に声を掛け、上高地で降ろしてもらうことにした。

当日、友人Hに送ってもらい、上高地を目指す。
途中コンビニでTが食料を大量購入。
T曰く、「これで2人で登ることになっても大丈夫」とか。
完全に冗談だと思っていた。

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我々を上高地へ送ってくれる友人H

沢渡で降ろしてもらい、バスに乗り込む。
マイカー規制の上高地は、ここからバスに乗らなければいけない。
朝6時頃、上高地に到着する。

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奥穂高の空気はとても気持ちが良い

初めて来た上高地。
都会の雑踏から抜け出し、久々に吸った美味しい空気と、久々に聞いた川のせせらぎが、これから踏み入れる未知の世界を目の前にして、既に感動を与え始めていた。

新緑を突き抜けて降り注ぐ木漏れ日の中をマイナスイオンを感じながら進む。

コケを見たのは何年ぶりだろうか。
都心の街路樹と違い、この場所に何十年何百年と立っていたであろうコケのびっしりついた大木。
これだけの自然を見ると、何かしら強い生命力を感じずにはいられない。

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中間地点の横尾山荘

写真を撮りながら約7キロの道のりを歩き11時頃、横尾山荘に到着。

7キロの道のりを5時間掛けて歩いてきた私は、完全に自然に酔っていた。
この時Tが「この先行くともっと綺麗だけど、登る?どうする?」と声を掛けてきたとき、ここで引き返すのはアホだと思った。
こんなに素晴らしい自然があり、今すでに感動しているのに、この先にあるものをここでみないで帰ると、もう一生見れない気がした。
そして、それを写真に収めたいと強く思い、OKしたのだった。

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つり橋を超えて横尾谷へ

そこから日焼け止めを塗り、いざ横尾谷へ。

運動不足の私の足が悲鳴を上げ始めた頃、通過ポイントの横尾谷のつり橋に着く。
この時点で13時頃。

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通過ポイントへ到着

涸沢を目前にした15時ごろ、目の前に雪渓が現れる。
ちょっとマテ。
私の靴は、登山靴では無い。ただのスニーカーだ。
周りの人間が登山靴にアイゼン(滑り止め)をつける様をみて、愕然とする。
Tは大丈夫だという。

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涸沢を目前に雪渓が現れる

確かに無理にアイゼンをつけずとも登りきることはできた。
それよりも、足がパンパンで、そっちの方が問題である。

17時15分に涸沢小屋に到着。
宿泊手続きをし、到着を祝う。

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夜は、星空撮影大会

この日の夜、初めての星空撮影を慣行。
初めて写した星の写真に感動。この日のビールは最高だった。

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山小屋の朝は早い

翌朝、奥穂高登頂を目指し、6時頃小屋を出発。

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ゴールは遠い

ゴールは見えているにも関わらず、なかなか到着しない。
そう、山は大きいのだ。

岩場を抜け

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岩場

鎖を登り

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鎖場

ザイテングラードから穂高山荘を目指す。

時刻は、12時半
穂高山荘に到着。

弁当を食べてから、奥穂高を目指し、さらに登る。

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穂高山荘から奥穂高へ

途中、山の間から槍ヶ岳が顔を出す。
Tが1日2日で行ったという槍ヶ岳は、奥穂高よりもさらに遠い。

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槍ヶ岳ヲ望ム

2011年7月17日 14時35分6秒
標高3190メートル 日本で3番目に高い山 奥穂高岳登頂

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奥穂高登頂

上高地がとても小さい。
あの赤い屋根がいくつかあるところが、上高地。
この山をぐるっと回って、登ってきたのである。

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上高地が遠い

頂上で話していたお姉さんが師匠と呼ぶ人が「カキ氷を食べよう」と、万年雪で作ったカキ氷をくれました。
要は拾った雪に練乳をかけただけなのですが、これがウマイ。
寒いんだけど、最高にウマイ。
容器も無かったのだが、お姉さんが容器を貸してくれた。
山では誰もがフレンドリー。
これも新しい発見だった。

そして、この後のタバコの一服がまた、最高にウマイ。

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万年雪カキ氷

穂高岳山荘に戻った時に、頂上で知り合って先に降りた渋いオジサン御一行が、拍手で迎えてくれました。
初登山をスニーカーで穂高に登ったのは、物凄い事だと言われました。
(ありがたい話ですが、ただのアホです。)

そして時間と体力の関係上、山を越えて下山するのはやめ、元来たルートを戻り、涸沢でもう一泊することに。

最高の気分とは裏腹に、体力の限界で力が入らず、足を挫いたせいもあり、この日の最後の下山者になる。

途中暗くなるもヘッドライトで道を照らし、なんとか涸沢小屋へ着いたのは、20時頃。

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まかないのカレー

一般客の食事の時間は終わっていたが、小屋の人が「まかないで良ければ」とカレーを出してくれた。
このカレーは最高に美味しかった。

翌日、朝4時頃に起床し、朝焼けを撮影し帰路につく。

当初の予定とは打って変わって、2泊3日の道のりだった。
何度も言うが、元々登るつもりは無かったのだ。

それにしても、最初に登った山が北アルプスと言うのが良い。

北アルプスと言う響き。
富山出身の私は、産まれてから何度もその単語を聞いたが、一度も登る事は無かった。
私が通っていた中学校では毎年、立山登山が行われているのだが、医者の診断を口実に行かなかった。
幼少期から体が弱かったせいで意固地になっており、体を動かす事を極端に嫌がるタチであった。

東京に来てから環境が変わり、アウトドアやマリンスポーツに手を出す機会に恵まれた。
それらは、できるできないでは無く、その過程、その時を楽しむ事だという事が分かった。
挑戦しない方が損。別に失敗しても良いのだ。そんな事は誰も気にしない。

せっかくだから挑戦してみようと思う気持ちの上で、初めての登山が北アルプス。
奥穂高は、立山登山よりも難易度が高いと言う。
何かを乗り越えたような気がした。

 

14時半。

2日ぶりにコンクリートの道を見たとき、笑いが止まらなかった。

 

結局、最後まで絵を描く時間は無かった。

 

登山の写真は 日本写真 奥穂高登山 にて公開中。


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